アケボノスミレ:夜明けの空を映した葉より先に花開く大輪の菫

アケボノスミレはスミレ科スミレ属の多年草で、草丈は5〜15cm程度で、主に本州から九州の明るい落葉広葉樹林の縁や、やや乾いた斜面などに自生する日本固有種の多年草で、太平洋側にやや多く見られます。
名前の「アケボノ」は、花の淡紅色が曙の空の色に似ていることに由来すると言われ、最大の特徴は、その名前の由来にもなった花の色です。夜が明けゆく空の色(曙色)を思わせる、鮮やかで深みのあるピンク色(濃桃色)の花を咲かせます。
他のスミレに比べて花が大きく、しかも葉が展開しきる前に花が立ち上がるという独特の性質を持つため、早春を彩る美しいスミレの一つとして、春の山野で一際目を引く存在感があります。

葉に先駆けて咲く濃桃色の気品

大輪のアケボノスミレの花
アケボノスミレの花:4月
太くて短いアケボノスミレの距
アケボノスミレの花(距):4月
東北での花期は4月で、多くのスミレが葉の間から花を覗かせるのに対し、アケボノスミレはまだ巻き気味の若葉を背景に、スッと伸びた花茎の先に大輪の花を咲かせます。
花弁は5枚で丸みを帯びており、側弁の基部には細かい毛が生えており、日光が当たると開き曇天や夜間は閉じる傾向があります。
花は白に近い淡いものから濃いピンク色のものまで、個体によって色の濃淡に変異があり、唇弁には紫色の筋が入り、距は太くて短く、やや後方に突き出ます。
この葉より先に花という性質が、このスミレに独特の気品と春の訪れを告げる主役級の風格を与えています。

花後に広がるダイナミックな心形

アケボノスミレの心形の葉
アケボノスミレの葉:5月
葉は葉身の2〜3倍程度の長い葉柄を持ち細かい毛が生えており、葉身はハッキリとした心形(ハート形)をしています。長さ・幅ともに6〜10cmほどになることもあり、スミレの中ではかなり大型の部類に入ります。
葉の質感はやや薄く柔らかで先端はやや鋭く尖り、葉縁には低い鋸歯があります。
開花時には完全に展開していないことが多く、若葉はやや紫色を帯びることがあり、花後に大きく成長し地面を覆うように広がります。

弾ける時に備える下向きの鞘

アケボノスミレの実
アケボノスミレの閉鎖花:10 月
果実は蒴果(さくか)で、長さ5〜8mm程度の楕円形から卵形をしており、5月から6月頃に成熟します。成熟すると緑から淡褐色に変化し、その後に上を向いて3裂して種子を弾き飛ばします。
開花期の花とは別に、夏から秋にかけて閉鎖花からできる果実も作られます。閉鎖花の果実は花が開かないまま自家受粉して種子を作るため、確実に子孫を残すことができます。

アリと旅するエライオソームの知恵

エライオソームを持つアケボノスミレの種
アケボノスミレの種:5月に播種
種子は蒴果(さくか)の中に多数入っており、長さ1.5〜2mm程度の楕円形をしています。表面は平滑で光沢があり、色は淡褐色から褐色で、種子には小さな付属体(エライオソーム)が付いており、これがアリを誘引します。
アリは付属体を食料とするために種子を巣に運び、結果的に種子散布に貢献します。この種子とアリの関係は、多くのスミレ類に共通する特徴です。
種子の寿命は比較的長く、土壌中で数年間休眠することもあり、実生による更新が盛んで適した環境では群生します。

当たるも八卦の、実生栽培の経年変化

おい、おい、ホントに育つのかい?大丈夫なのかい? – こたえは数年後だね
種を蒔いてからどう育ったのか? – 実際の経験談のまとめ

1年目のアケボノスミレ

アケボノスミレの発芽
アケボノスミレの発芽:翌年の4月に発芽
実生栽培では、実が弾ける前に袋を被せるなどして採種し、採り蒔きすると翌春には愛らしい芽を見せてくれます。前年の5月に採種し赤玉土の小粒に採り蒔きした種が、翌年の4月に発芽しました(蒔いた年の秋に発芽することもあるらしい)。小さな芽でしたが、順調に育って、秋には地面に植えつけました。

2年目のアケボノスミレ

年を越したアケボノスミレの芽生え
アケボノスミレの芽生え:2年目の4月初旬
アケボノスミレの開花
アケボノスミレの開花:2年目の4月中旬
冬には地上部が枯れてしまいましたが、2年目の4月になると小さな芽生えが始まり、半月ほどで花を見ることができました。運良く2年目に花が咲きましたが、情報には「発芽した幼植物は小さな葉を1〜2枚展開し、翌年または翌々年に開花します」というものもありました。

数年間育ててみた感想

運良く2年目に花が咲きましたが、情報には「種子は秋に発芽するものと翌春に発芽するものがあり、発芽時期にはばらつきがあります」や「発芽した幼苗は小さな葉を1〜2枚展開し、翌年または翌々年に開花します」というものもありました。花が咲いていないのにいつの間にか種ができている閉鎖花(へいさか:花が開かずに自家受粉して実をつけるスミレ特有の仕組み)で種がたくさん採れることなど、スミレ栽培ならではの面白さもあります(育てた中ではヒゲネワチガイソウなども閉鎖花ができました)。

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