アケボノソウ:花びらに刻まれた夜明けの星空

アケボノソウはリンドウ科センブリ属に分類される越年草(あるいは二年草)です。北海道から九州まで、山地の湿った場所や水流のそば、あるいは木陰の湿り気のある林縁などに自生します。草丈は50~100cmほどになり、直立した茎が上部で枝分かれし、多数の花を咲かせます。
和名の「アケボノソウ」は、花びらに散る黒紫色の斑点を、夜が明けゆく空に残る星(曙)に見立てたことに由来します。センブリの仲間だけあって、全体に苦味がありますが、秋の湿地を彩る美しい野草として知られています。

精巧なデザインでアリを招く二つの緑の目

アケボノソウの花:9月
アケボノソウの花
アケボノソウの花:9月
東北地方では9月に開花し、枝先に直径2cmほどの星形の白い花を多数咲かせます。 花は平開し上向きに咲き、雄しべは5本で雌しべは1本、子房は1室です。
花弁の最大の特徴は、先端には夜明けの星のような斑点が散りばめられ、星空のように見えます。その少し中央寄りには緑色の円い大きな斑点が二つずつ並んでおり、この緑色の部分は「蜜腺(みつせん)」と呼ばれ、蜜が分泌され昆虫を誘います。
アケボノソウは、この蜜でアリを呼び寄せ受粉を助けてもらうというユニークな戦略をとっています。

対生する端正な姿で平行脈が描くリズム

平行脈が目立つアケボノソウの葉
アケボノソウの葉:9月
葉は対生し、長さ3~8cmの卵状の長楕円形をしています。基部は円形で茎を抱くような形をしており、表面には数本の平行な脈がはっきりと浮き出て、端正な印象を与えます。
1年目はロゼット状の根生葉(地面に張り付いた葉)だけで過ごし、2年目にようやく茎を高く伸ばして花を咲かせます。

秋風に揺れる未来を詰め込んだ鞘

アケボノソウの実:枯れた花柱
アケボノソウの実:11 月
花が終わると、長さ1.5~2cm程度のリンドウ科特有の細長い「蒴果(さくか)」が形成され先端が尖ります。果実は10月から11月頃に成熟し、完熟すると上部が2裂して開き、中から多数の微小な種子が顔を出し、枯れた花柱が残ります。
秋が深まり、茎や葉が茶褐色に枯れゆく中で、空を向いて開いた果実の姿は、役目を果たした充足感を感じさせます。

微小な粒に宿る二年越しの命

微小なアケボノソウの種
アケボノソウの種:11 月に播種
種子は、長さ1mmにも満たないほど微細な楕円形で、表面には細かい網目模様があり黒褐色をしています。
この小さな種子が風や雨によって運ばれ、新たな湿地へと旅立ちます。
アケボノソウは越年草のため、秋に蒔かれた種は翌春に芽を出し、1年目は葉を広げて力を蓄えロゼット状で越冬し、2年目の秋にようやく美しい星空を咲かせます。

当たるも八卦の、実生栽培の経年変化

おい、おい、ホントに育つのかい?大丈夫なのかい? – こたえは数年後だね
種を蒔いてからどう育ったのか? – 実際の経験談のまとめ

1年目のアケボノソウ

アケボノソウの発芽
アケボノソウの発芽:翌年の4月に発芽
アケボノソウの発芽
アケボノソウの発芽:発芽から2ヶ月後の6月
前年の11月に採取後、赤玉土小粒の上にバラ蒔きしました。
好光性の種子のようですが、風雨で適度に潜って寒さを凌いでくれたのでしょう、無事に、多数の株が発芽してくれました。
その後、夏の暑さで数は減ったものの、秋には何カ所かに植えつけることができ、東北でも半分くらいの葉は残り、1年目はロゼット状の根生葉で越冬しました。

2年目のアケボノソウ

アケボノソウの芽生え:2年目の4月
アケボノソウの芽生え:2年目の4月
花柱が伸びてきたアケボノソウ:2年目の5月
花柱が伸びてきたアケボノソウ:2年目の5月
アケボノソウの開花
アケボノソウの開花:2年目の9月
無事に冬越しができ、2年目は4月に芽生えてきました。乾燥する場所に植えたものは、夏に枯れてしまいましたが、半日陰のものは5月には花柱が伸び始め、9月に待望の美しい花を見ることができました。

数年間育ててみた感想

情報では「発芽には光が必要な好光性種子で湿った土壌表面で発芽します」ということで、やはり乾燥する場所での栽培は難しいようです。1年目は鉢でなんとか管理できますが、地面に下ろした2年目は、乾燥地に適当な管理者では歯が立ちませんでした…。でも、無事に咲いてくれたので良しとしましょう。:-)
場所によっては、2年目の夏に花柱は枯れても諦めないで育てれば、根生葉が残り3年目で開花する株もありました。実生栽培においては、この2年サイクルを意識した管理が必要になるようです。
その後、零れ種でなんとか出てこないか観察していましたが、そこまでは無理なようで、毎年秋に鉢に撒き直しています。そういえば、リンドウ科のリンドウは嫌というほど出てくるのに、センブリ属のセンブリも零れ種ではあまり増えません、なんでかな?

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