アクシバ:クルンと反り返る花弁が愛らしい山の宝物

アクシバは北海道から九州まで全国の山地に自生するツツジ科スノキ属の落葉低木です。樹高は20〜100cm程度で、枝は細く地を這うように横に広がり、山地の林縁などやや乾燥した場所に生育します。枝はしなやかでよく分岐し、樹皮は灰褐色で滑らかで若い枝は緑色を帯び角張っています。
かつてこの植物の「灰汁(あく)」を取り染色などに利用した「柴(しば)」であることから、「灰汁柴(アクシバ)」の名がついたとされています。
ブルーベリーやクランベリーと同じスノキ属の仲間で、小さいながらも食用になる赤い実を付けます。

精巧な工芸品のようにクルリと巻いた桃色の花弁

ピンク色のアクシバの花
アクシバの花:7月
東北での花期は7月で、新枝の葉腋に長さ6〜8mm程度の釣鐘形で、白色から淡紅色の花が1個ずつ下向きに吊り下げるように咲かせます。
花冠は先端が5裂して反り返り、クルクルと丸まっています。
この反り返った花冠が最大の特徴で、小さいながらも小さなシャンデリアのような精巧な造形が美しい花です。
雄しべは10本で葯には長い角状の突起があり、雌しべは1本で花柱は花冠から少し突き出ます。
花の形が独特でユニークな造形は、一度見ると虜になるファンも多く、山野草愛好家に親しまれています。

緑の波打つ瑞々しい初夏の彩り

瑞々しいアクシバの葉
アクシバの葉:5月
葉は互生し楕円形から卵形をしており、長さは2〜6cm程度で葉の先端はやや鋭く尖り、縁にはごく細かい鋸歯があります。
特徴的なのはその質感で、薄くて柔らかく、表面にはわずかに光沢があります。
また、若枝が緑色で角(稜)があるため、花がない時期でもスノキ属らしい特徴で識別することができます。新葉は淡緑色で、やや赤みを帯びることもあり、秋には美しく紅葉し、低木ながら山の斜面に静かな彩りを添えてくれます。

宝石のような透明感は森で出会う真っ赤な真珠

アクシバの星型の実
アクシバの実:9月
アクシバの真っ赤な実
アクシバの実:10 月
果実は直径1cm弱の球形の液果で、東北では10月から11月に成熟し、下向きに垂れ下がり透明感のある美しい赤色になります。果実の先端には萼片が残存し、星形に見えます。
この実は食用になり、甘酸っぱいですがジャムや果実酒に利用されることもあります。
熟した果実は柔らかく鳥にも好まれ、野鳥による種子散布が行われます。
果実期には葉も紅葉するため秋の山で目を引き、赤い実と紅葉が同時に楽しめます。

小さな粒に秘められた次世代への希望

アクシバの小さな種
アクシバの種:10 月に播種
赤い実の中には、非常に小さな褐色の種子がいくつか入っています。スノキ属の例に漏れず、種子は微細ですが、採取して蒔くことで実生から育てることが可能です。
成長はゆっくりですが、自分の手で育てた株にあの「クルン」とした花が咲いた時の感動は、格別なものになるでしょう。

当たるも八卦の、実生栽培の経年変化

おい、おい、ホントに育つのかい?大丈夫なのかい? – こたえは数年後だね
種を蒔いてからどう育ったのか? – 実際の経験談のまとめ

アクシバの発芽
アクシバの発芽:10 月(播種から2週間程度で発芽)
「発芽には寒さを経験する必要があり、乾燥させないように管理すると翌春に発芽します」という情報もありましたが、10月に赤玉土の小粒に採り蒔きして2ヶ月で発芽しました。なんということでしょう。:-0

1年目のアクシバ

発芽から半年のアクシバ
発芽から半年のアクシバ:翌年の5月
発芽から半年経ちましたが、寒い冬を越したせいもあり、まるで「髪の毛」かと思うほど細く弱々しく、「本当にこれが木になるのか?」と心配になるほどでした。1年目はほとんど大きくなった実感がなく、消えてしまわないか心配していました。

2年目のアクシバ

発芽から2年目のアクシバ
2年目のアクシバ:5月
少しだけ木の感じがしてきましたが、成長は極めてスローペースです。

3年目のアクシバ

発芽から3年目のアクシバ:5月
3年目のアクシバ:5月
ようやくしっかりとした枝が出てきました。スノキ属特有の緑色の角ばった枝が少しずつ伸びていく姿に、生命の力強さを感じます。
アクシバの蕾
アクシバの蕾:3年目の6月
3年目の6月にピンク色の蕾が見えてきました。
アクシバの開花
アクシバの開花:3年目の6月
ついに待ちに待った花が咲きました。
3年目にして、あの「クルン」と反り返った独特の花を見ることができました。:-)
ようやく拝めたその姿は、どんな図鑑の写真よりも美しく感じられました。

4年目のアクシバ

アクシバの開花:4年目の7月
アクシバの開花:4年目の7月
アクシバの開花:4年目の7月
アクシバの開花:4年目の7月
実生4年目も順調に開花まで進み、株も充実し枝数も増えてきました。その後、小さな緑の実をつけ真っ赤に熟すのを待っていたのですが、夏の暑さに負けたようで成熟する前に力尽きてしまったようです。
東北でも近年は30℃を越す日が続きますので、日陰には置いていたのですが真っ赤な実は無理でした。

数年間育ててみた感想

アクシバを数年の間育ててみて感じたのは「意外に丈夫だな」ということです。 鉢では赤玉土、庭では山土で育てていますが、今のところ元気に育っています。ただ、ツツジ科の植物であることを考えると、水持ちや酸度を整えるために、鹿沼土やピートモスを少し足してあげると、夏の暑さへの耐性も変わってくるかも知れません。
髪の毛のような芽が3年目に花を咲かせた喜びは、実生栽培の醍醐味そのものでした。 来年こそは、あの赤い実が完熟する姿を拝めるように、少し土の配合を変えたり夏場の置き場所を工夫したりして、のんびりとつき合っていこうと思います。:-)

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